デザインは問いを投げかけ、好奇心を刺激すべきだ
家具デザイナー、マリア・ブルーンとの対談
すでに高い評価を得ているマリア・ブルーンは、長い歴史を誇るデンマークのデザイン伝統に連なります。クラシックなデンマーク家具デザインへの真摯な敬意を礎に、革新的なアプローチと優雅な造形言語を重ね合わせ、芸術性と機能性の境界を行き来する作品を生み出しています。その好例が、彼女の彫刻的ミニマリズムを反映したフレデリシア社の「アイレッツ」テーブルコレクションです。ブルーンはそのデザイン姿勢により、デンマークの権威あるフィン・ユール賞とウェグナー賞を受賞しています。
“ 製品そのものよりも、彼女のデザインプロセスへの向き合い方に私は強く刺激を受けます。家具、インテリア、テキスタイル、日用品、ジュエリー──ナナにとっては何であれ自分の領域であり、自由に形づくれる芸術的課題でした。そして、主観性と創造性をとことん追求する彼女の妥協のない姿勢は、私が敬意を抱き、自身の仕事にも生かしているものです。 ”
マリア・ブルーン 家具デザイナー
FREDERICIA ディッツェルのデザインのどこがユニークだと思いますか?
MARIA ナナは装飾を恐れませんでした。造形言語そのものや穿孔、色彩構成など、どれもとても興味深いのです。自然から得たインスピレーションはこれらの装飾的なタッチに色濃く表れ、ほかの多くが引き算に向かっていた時代に、彼女はまるで「抑えきれない」かのようにためらわず足し算を行っていました。
F 家具デザイナーとして、ディッツェルの仕事からどのような影響を受けていますか?
M 彼女のプロダクトそのものより、プロセスへの向き合い方に刺激を受けています。ナナにとっては家具、インテリア、テキスタイル、日用品、ジュエリーと、あらゆるものが自分のフィールドであり可塑的な芸術課題でした。主観と創造性を貫くその妥協なき姿勢は、私も大いに取り入れたいと考えています。
私にとって創作はとても直感的で主観的です。だからこそ多くの場合、ブリーフの外側でデザインします。制約がない状態でアイデア・形・素材が自由に行き来し、各ステップが次を導く反復プロセスの中で変容していくのです。トーマスとラスムス・グラヴァセンと協働した際もブリーフ外でデザインし、私自身を濃縮した大胆なプロダクトが生まれました。既存ポートフォリオや市場競合、大量生産だけに目を向けるのではなく、デザイナーのビジョンを商業的枠組みへ翻訳した意味あるデザインに焦点を当てる――それほどまでにデザイナーの声に耳を傾けるメーカーは、今の時代では勇敢だと言えます。私たちは「良いデザインが私たちにとって重要なら、消費者にとっても重要だ」と信じています。
F あなたはディッツェル同様、ルールに縛られないデザイナーだと言われています。詳しく教えてください。
M 私のプロセスは直感的ですが、完全に自由奔放というわけではありません。妥協のない芸術的アイデアが芽生えた後は、それを機能的で実用的な家具へと転化することを目指します。ここからが機械や熟練職人と共に最適化と探究を行う段階です。職人の声に耳を傾けつつ、「これが作法だ」「昔からこうだ」といった技術や固定観念に時には異議を唱えることも必要です。目的ではなく手段として、あえて伝統的な形や生産方法を押し広げ、失敗もしながら新技術や可能性を見つけることで常識に揺さぶりをかけていくのです。
One of the best steps in the process is here, where I need to listen to the skilled and experienced craftspeople, but also sometimes push back on techniques and notions like “this is how it’s done” or “we’ve always done it this way”. This is not an end in itself, but sometimes it may be necessary to push the conventional forms and production methods – to make some mistakes – to discover new techniques or potential, thus pushing back on what’s traditional.
F ディッツェルは従来のデザイン観に反旗を翻しましたが、いまデンマークデザインにも変化が起きているとお考えですね?
M 今日の若いデザイナーはナナのプロセスや創作姿勢に共感できます。いまの世代にとってデザインに正解も不正解もありません。デザイナーも消費者もはるかに自律的で、デザインはアートにも建築にも、美しくても醜くてもなり得ると理解しています。表現形態は多様化し、若手は「意味があるか」「反応を引き出せるか」を重視します。途中で立ち止まり「これで完成。私のデザインは周囲にとって意味がある」と宣言する傾向が強く、ナナの時代のような直線的な「本物のデザイン」プロセスではありません。今日のデザイン消費はずっと実験的で、従来の「デザイン観」を揺るがすエキサイティングなプロダクトが生まれています。
F ディッツェルにとっては常に前進し問い続けることが不可欠でした。あなたにとってデザインするときに重要なことは?
M 私にとって大切なのは、「良いデザインには意味がある」と強調することです。デザインは単なる機能を超え、使う人に価値と意味をもたらします。私は使用者の好奇心をくすぐったり、わずかな違和感や苛立ちを覚えさせたりする要素を作品に忍ばせるのが好きです。そこからエンドユーザーとの対話が生まれると感じています。
F ナナ・ディッツェルの作品でお気に入りは?
M 彼女のジュエリーは本当に美しいですし、ハリングダールのテキスタイルは長年その価値を証明してきました。また、DSBやIC3列車とのカラースキームも素晴らしい成果でした。しかし私の一番のお気に入りは1962年の「トリッセ」テーブルです。遊び心と彫刻的要素を備えたシンプルなデザインで、脚を握ればテーブルを持ち上げることができます。手のグリップに完璧な寸法で、スタッキングできる“積み木”のように空間的ポテンシャルは無限。単体でも、100台並べて空間彫刻にしてもまったく別の用い方が可能です。スケールレスでありながら身体との一対一の関係を保っている――そこがとても刺激的です。
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ナナ・ディッツェルの生涯とそのデザイン、そして彼女を知る人々の物語の世界へ飛び込もう。
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